私たちは毎日、さまざまな人と関わりながら生きています。
職場、家庭、友人関係、SNS……。
人と人が関わる場には、いつでも大小のすれ違いや誤解が潜んでいます。
そんななかで、関係を円滑に保つための大切なポイントの一つが、「相手に恥をかかせない」という姿勢です。

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恥をかくことの本質とは?
「恥をかく」とは、自分の失敗や無知、欠点などが他人にさらされ、自尊心を傷つけられる状態のことを指します。
例えば、
- 会議での発言ミスを皆の前で笑われる
- 知らないことを問い詰められる
- できないことを責められる
こうした経験は誰にとっても居心地の悪いものです。
そして、一度そのような思いをすると、「この人とは距離を置こう」と感じてしまうのが人情です。
なぜ「恥をかかせない」ことが大切なのか?
人は誰でも、「自分を尊重してほしい」「傷つけられたくない」という気持ちを持っています。
相手に恥をかかせないように接することは、その人の尊厳を守ることにつながります。
逆に言えば、いくら正しい指摘であっても、言い方ひとつで関係を損ねてしまう可能性があるのです。
特に、職場や家庭など「これからも関係が続いていく場」では、相手のプライドを尊重しつつ関係性を築く姿勢が求められます。
では、具体的にどうすればいい?
ここからは、「相手に恥をかかせない」ために、実際に私が心がけているポイントをご紹介します。
1. その場での指摘を避ける
誰かの間違いや勘違いに気づいたとき、その場で訂正したくなることがあります。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。
「今ここで言う必要があるか?」
例えば大勢の前で「それ違いますよ」と言ってしまうと、相手の顔に泥を塗ることになりかねません。
間違いを伝える必要がある場合は、あとで他の人が居ないところでそっと伝える。
あるいは、「私の理解が間違っていたらごめんなさい」とワンクッション入れるだけで、ずいぶん印象は変わります。
2. ユーモアで“和ませる”のはOK、でも“笑いものにしない”
ユーモアや笑いには、場の空気をやわらかくする力があります。
誰かが失敗してしまったとき、その場をフォローするためにあえて軽く笑いに変えるというのは、非常に高度な気遣いです。
たとえば、
- 「あ〜、私も同じミスしたことありますよ〜!仲間ですね(笑)」
- 「それって実は私も知らなかったです。聞いてくれて助かりました(笑)」
といった言い回しで、相手の失敗を“共感”や“自分ごと”に変えて笑いにするのは、恥を中和するやさしいユーモアです。
ただし注意したいのは、「笑う」と「笑いものにする」は似て非なるものだということ。
- 「えっ、そんなのも知らないの?(笑)」
- 「さすが○○さん、期待を裏切らないね(笑)」
こうした“いじり”のような笑いは、相手にとっては「恥をかかされた」と感じるリスクが高いです。
笑いの“矢印”がどこに向いているか——これが、ユーモアの使い方で大きな分かれ道になります。
3. ミスや失敗を「責めない」「問い詰めない」
誰でも失敗はあります。
でも、追い詰められるような言い方をされると、「もうこの人とは関わりたくない」と思ってしまうのが人間です。
大切なのは、「責任を取らせること」ではなく「次にどうするか」を一緒に考える姿勢。
「この経験をどう活かせるか」に焦点を当てることで、相手の心も守られ、前向きな関係が保たれます。
4. 自分も“間違える存在”であることを忘れない
「人のふり見て我がふり直せ」と言いますが、他人のミスに敏感な人ほど、自分のミスには鈍感になりがちです。
私自身も、うっかり発言で相手を傷つけてしまった経験があります。
そのとき初めて、「自分もまた“誰かに恥をかかされた”と思わせていたのかもしれない」と気づきました。
だからこそ、自分が「完璧ではない」ことを忘れないことが、他人の過ちにも寛容になれる第一歩だと感じます。
恥をかかせない人は、信頼される
人との距離感が難しいこの時代、「この人となら安心して話せる」「この人の前では、自分らしくいられる」と思ってもらえることは、何よりの財産です。
恥をかかせないということは、相手を「敵ではなく、味方」として扱うこと。つまり、目の前の人の“心”に寄り添う姿勢です。
信頼される人とは、知識がある人ではなく、「自分の弱さを見せても大丈夫だ」と思わせてくれる人なのかもしれません。
おわりに
「正論」はときに刃物になります。「思いやり」は空気をあたためます。
言葉にする前に一呼吸、「これを言われたら自分はどう感じるだろう?」と想像してみるだけで、私たちの人間関係はもっとやわらかく、あたたかなものになるはずです。
そして、相手の尊厳を守るという姿勢は、巡り巡って自分の信頼や安心にもつながります。
あなたの優しさが、誰かの心を救う日がきっと来るはずです。