旅立ちの日、思わぬ台風と空港の混乱
初めてのニューヨーク旅行は、思いがけないトラブルから始まりました。
日本を出発したのは2019年10月下旬。
台風シーズンも過ぎていると思い、安心していたのですが、この日は大型台風が日本に接近しており、空港は少し混乱が始まっていました。
セントレア着の到着便が大幅に遅れたため、私たちの出発も大幅に遅れました。

デトロイト空港での想定外の一夜
アメリカではデトロイト空港で乗り継ぎ、ニューヨーク・ラガーディア空港へ向かう予定でしたが、度重なる遅延で乗り継ぎ便が出発できず、デトロイト空港で一夜を過ごすことに。
ただ、今回はデルタ航空同士の乗り継ぎだったものの、スルーバゲージにはならず、荷物はいったん自分で受け取り、再び預け直さなければなりませんでした。
その際、荷物を預かるスタッフさんの対応がとても乱雑で、スーツケースを投げるように扱う様子を見てしまい、正直、不安な気持ちになったのを今でも覚えています。
到着と同時に判明したロストバゲージ
翌朝、なんとかラガーディア行きの便に乗ることができたものの、到着してみると、預けたはずのスーツケースが出てこない。
ロストバゲージが発覚しました。
空港で手続きを済ませて、タクシーで宿泊先のシェラトン・ニューヨークへ向かいましたが、そこでさらに不安な出来事が起こります。
同行していた父が体調を崩し、滞在中ほとんど起き上がれない状態に。
父はインスリンの自己注射をしており、予備の医療用品をスーツケースに入れていたため、冷や汗が出ました。
幸いにも、最低限の医療用品は手荷物に入れていたため滞在中はなんとか対応できましたが、「重要な物は必ず手荷物に」という教訓を強く実感しました。
心に沁みたRikaさんの優しさ
そんな中、私たちを支えてくれたのが、ホテルスタッフの日本人女性・Rikaさんでした。
父の様子を他のスタッフから聞いたRikaさんは、すぐに部屋に駆けつけてくださいました。
そして、お味噌汁、おにぎり、フルーツジュースなどを何度も運んでくださり、夜には「お父様が少しでも楽に休めるように」と毛布をそっと届けてくださいました。
そのおにぎりとお味噌汁と黄色い沢庵漬けが、異国の地で不安に包まれていた私たちの心を、どれほどあたためてくれたか、今でも忘れられません。
何度かご挨拶をしようとしましたが、そのたびに「お気持ちだけで十分です」と笑顔でおっしゃり、チップも一切受け取ってくださいませんでした。
最終的にLINEを交換させていただき、帰国後も父の体調を気にかけてメッセージを送ってくださいました。
ほんの少し歩いたニューヨークの街
父が眠っている間、私はそっとホテルを抜け出して、ほんのわずかにニューヨークの街を歩きました。
セントラルパークでは、ニューヨークマラソン大会を前に多くの人が走っていて、活気に満ちていました。
タイムズスクエアでは、観光客や地元の人々が交錯し、まるで人生のエネルギーが渦巻いているような熱気を感じました。
思わず、ぽろっと涙がこぼれました。
でもその涙は、悲しさよりもあたたかさと力をもらえたような、不思議な涙でした。
忘れられない旅、そしてこれから
この旅は「楽しかった」とは言えないかもしれません。
でも間違いなく、私の人生の中で忘れられない、大切な旅になりました。
スーツケースは帰国後、セントレアで無事に見つかりました。
けれど、いちばん心に残ったのは“荷物”ではなく、“人のやさしさ”でした。
Rikaさん、本当にありがとうございました。
いつかまたお会いして、お礼を伝えたいです。
そしてあの日ニューヨークで受け取った力を胸に、私は今、出会う人一人ひとりに思いやりをもって接するよう努めています。
この旅で得た教訓まとめ
- 台風シーズンはたとえ10月下旬でも油断せず、最新の天候情報を確認すること
- 薬や貴重品、最低限の衣類は必ず機内持ち込みに
- 可能な限り受託荷物を避け、機内持ち込みだけで対応できるようにする
- 乗り継ぎがある場合、スルーバゲージかどうかを事前に確認する
- スーツケースが届かなくても動揺しないよう、冷静な対応を心がける
- トラブル時こそ、人の優しさが何より心に残る
- 感謝の気持ちは言葉にして伝えることが大切
- 恩は、受けた相手に返すだけでなく、別の誰かへもつないでいくもの










