中国時代劇ドラマや古装劇を観ていると、素敵な窓が背景に映り込む場面に出会います。
まずは字幕を追うのに必死なのですが、気づくと背景の窓やカーペット、燭台などのインテリアばかり目で追ってしまい、物語に集中していないときがあります。
それほどまでに、映像の中の建物や装飾は美しく、細部まで作り込まれているのです。
中でも特に心を惹かれるのが、花や雲のような曲線を描いた「花窓(はなまど)」や、その内部に施された精緻な「花格子(はなごうし)」、そして庭園の中で人々を迎えるアーチ型の門「洞門(どうもん)」です。
これらはいずれも、中国建築の美意識や文化が息づく、大切な要素だと感じます。

格子越しの光が差し込み、格式と優美さが調和する印象的な一場面。
花窓とは?
花窓は、中国の伝統的な窓のデザインのひとつで、花のような形をした窓の総称です。
明や清の時代、庭園や邸宅などによく使われたそうで、景色を切り取る「額縁」のような役割を果たしてきたといわれます。
形は梅の花、蓮、雲、宝相華(ほうそうげ)などさまざまで、それぞれに吉祥や幸運を願う意味が込められている場合もあるそうです。
こうしたモチーフは風水ともつながりがあり、窓そのものが“幸運を招くおまじない”のような存在だったのかもしれません。
花格子とは?
花窓の中に組み込まれた透かし細工の部分を、花格子と呼ぶことがあります。
格子は風や光を通しながら、外からの視線をほどよく遮る役割を持っています。細い木や石で作られた格子が生み出す影は、時間や季節によって表情を変え、室内に柔らかな雰囲気を与えます。
ドラマで見る花窓の魅力
室内の情景を引き立てる花窓
中国宮廷ドラマや江南地方を舞台にした作品では、花窓がとても印象的に映ります。
たとえば、室内で女性が静かに物思いにふけるシーン。
窓から差し込む光が格子を通って床に模様を描き、登場人物の心情を静かに引き立てます。

この画像の花窓は、四つ葉のような形をしています。
調べてみると「連続した幸運」を意味する吉祥紋様とされることもあるそうです。
背景の柔らかな光と、人物の赤い衣装とのコントラストがとても美しく感じられます。
庭園に並ぶ花格子
室内だけでなく、中国庭園でも花格子は重要な存在です。
白壁に開けられた花窓は、庭の景色をまるで絵画のように切り取ります。
外から中をのぞくと、限られた枠の中に池や樹木が収まり、その場その場で違う景色が楽しめます。
これは「借景」という庭園の技法にも通じるようです。

壁越しに見る景色は、まるで絵画のよう。
江南の庭園を訪れた人の話では、歩くたびに花窓越しの景色が変わり、まるで物語の舞台を巡っているような気持ちになるのだとか。
私もいつか実際に見てみたいと思わせてくれる風景です。
花窓の形と意味
形によって意味合いが変わるとされる花窓。いくつか代表的なモチーフを挙げてみます。
- 梅花形:冬に咲く梅のように、忍耐と再生を象徴
- 蓮花形:清らかさや精神の安定
- 雲形:円満や調和、昇運
- 宝相華:富と繁栄
もちろん、現代では純粋にデザインとして選ばれることも多いようです。
素材とつくり
花窓や花格子には、木や石、煉瓦、漆喰などさまざまな素材が使われます。
屋外では耐久性のある石や煉瓦、室内では木製の繊細な格子が好まれたそうです。
昔は職人が一つひとつ手作業で組み立てていたため、同じ形でも微妙に表情が違うのも味わいのひとつです。
洞門(どうもん)とは?
花窓や花格子と並んで、中国庭園でよく見かけるのが「洞門」です。
特に丸い形の月洞門(げつどうもん/yuè dòng mén)は有名で、満月のように円形にくり抜かれた壁が、次の空間への入口になっています。

額縁のように切り取られた先には、柳が揺れる池の景色が広がる。
形と意味
- 丸型:円満・調和・家族の和
- 花や雲の形:吉祥や繁栄
- 楕円や変形型:遊び心や芸術性を強調
ドラマでの洞門
中国時代劇では、庭園を背景に人物が月洞門をくぐるシーンがよく登場します。
丸い門の中に人物が立つと、その姿がまるで絵画の一部のように見え、ロマンチックな雰囲気を演出します。
また、門越しに見える庭の景色が、物語の移り変わりを象徴していることもあります。
花窓・花格子・洞門の共通点
これら3つに共通するのは、「景色を額縁のように切り取る」という点です。
ただ通風や採光のためだけでなく、その向こうにある景色や人の姿を、意図的に美しく見せる役割を担っています。
中国建築のこうした発想は、現代のインテリアや写真撮影にも生かせるヒントになると思います。

竹や石の景観と調和し、奥行きのある美しい景色が広がる。
現代での活用
最近では、中国国内だけでなく、日本や海外の中華レストラン、ホテル、邸宅でも花窓デザインが取り入れられています。
ガラスや金属と組み合わせたり、照明と合わせて影を楽しむインテリアにしたりと、現代の空間づくりにも相性が良いようです。
-
浮図縁×王鶴棣の世界観を再現|中華風インテリアにおすすめ照明
中国時代劇『浮図縁』第12話の幻想的な上元節のシーン。提灯が揺れる美しい夜の描写に、思わず目を奪われました。 「あれ……この照明、どこかで見たような?」そう思った瞬間、ふと頭に浮かんだのは――我が家に ...
続きを見る
撮影の楽しみ方
花窓や花格子を訪れたら、写真に残すのもおすすめです。
撮影ポイント
- 光の向きを意識する
- 窓越しの景色を主役に撮る
- 人物と合わせて物語性を出す
中国ドラマ『風起西州~烈風に舞う花衣~』にも注目!建築美が光る映像スタイル
『風起西州~烈風に舞う花衣~』は、『風起花抄~宮廷に咲く琉璃色の恋~』の待望の続編として誕生したロマンティック宮廷大作。
主演カップルの成長ドラマとしても注目されますが、それ以上に建築やインテリア好きにとって“背景美術の宝庫”ともいえる作品です。
美術セットの見どころ
部屋ごとに異なる豪華な花窓や花格子を背景に、光と影が織りなす陰影が印象的です。
室内には繊細な木彫や格子窓、彩り豊かな布地が配置され、中国建築ならではの雅やかさが漂います。
さらに、金色装飾を施した食器や家具、鮮やかに彩られた絨毯やカーテンなど、細部までこだわった美術品が放つ存在感が、場面全体を一層華やかに彩ります
異国情緒と風景美
- 舞台が西州(現在の新疆ウイグル自治区あたり)に移ることで、宮廷や庭園に加えて、砂漠・遊牧・市場の風景といった異国情緒あふれるロケ地も見られるようになります。
- 細部まで重視された庭園の風景づくりが、建築好きの視線を引きつけます。
オープニング映像は“早送り厳禁”
『風起西州~烈風に舞う花衣~』は、本編だけでなくオープニング映像もとても美しく、細部までこだわりが感じられます。
私は毎回つい見入ってしまい、早送りせずに“背景美術のショーケース”として楽しんでいます。
花窓や花格子のモチーフが映像の中でさりげなく使われていて、シノワズリ好きの方には特に刺さるはずです。
おわりに
花窓、花格子、そして洞門。
どれも可愛らしさや優美さの中に、長い歴史や文化が詰まった存在です。
中国ドラマを観るとき、衣装やセリフだけでなく、背景の窓や門にも目を向けると、物語の奥行きがぐっと広がります。
そして、いつか本物の花窓や月洞門越しに景色を眺める旅に出てみたくなりますね。