暮らし

🌿5月の保存食:梅仕事に込める暮らしの祈り

梅仕事とは──5月に始める暮らしの手しごと

梅雨入り前、5月下旬から6月上旬にかけて始まる「梅仕事」。
青梅が市場に出回るこの時期、梅シロップや梅干しを仕込む風景は、日本の初夏の風物詩です。

梅仕事は、季節と暮らしをつなぐ“祈り”のようなもの

ただ保存食を作るだけではなく、
“家族の無事”や“健康への願い”を込めて作る──それが梅仕事の本質です。

手をかけて仕込む時間が、心を整えてくれる

一粒ずつ丁寧にヘタを取る、
瓶を煮沸消毒する、
毎日揺らす──手間の中に込められるのは、静かな祈り。

現代では忘れられがちな「丁寧な暮らし」が、
梅仕事には今も息づいています。

3つの梅仕事とその意味

1. 梅シロップ:子どもの夏バテ予防に

青梅と氷砂糖を交互に瓶に詰め、毎日揺らして完成を待つ梅シロップ。
1ヶ月後には、爽やかな酸味の健康ドリンクが出来上がります。

甘酸っぱい味わいは、暑さで食欲が落ちたときにもぴったり。
夏場の水分補給や、子どもの熱中症対策としても活躍します。

この梅シロップには、「家族を元気に過ごさせたい」という思いが込められています。

🍶 基本の梅シロップの作り方

■ 材料(保存瓶2リットル分)

材料分量
青梅(傷のないもの)1kg
氷砂糖(または上白糖)1kg
酢(殺菌用・お好みで)大さじ1(なくてもOK)

🧂 下準備(作業前にやること)

  1. 保存瓶の消毒
     熱湯を回しかけるか、アルコールで内側をふき取り、自然乾燥します。
    (完全に乾かしてから使いましょう)
  2. 梅の下処理
     - 梅はやさしく水洗いし、ザルに上げて水気をふき取る。
     - 爪楊枝や竹串でヘタ(なり口)を取り除く。
     - 水気が残るとカビの原因になるので、完全に乾かしてから使います。

🫙 作り方(漬け込み)

  1. 梅と氷砂糖を交互に入れる
     保存瓶に、青梅→氷砂糖→青梅…と交互に重ねていきます。
     ※すべて入れたら、軽くふたをして密閉します。
  2. 涼しい場所で保存する
     直射日光を避け、冷暗所に置きます。
     梅からシロップが出るまでは、1日1回瓶をゆっくり揺らして全体をなじませます。

🕒 完成までの目安

  • 1週間目:梅から水分が出始め、シロップ状になります。
  • 2〜3週間目:シロップが全体に回り、梅がしわしわに。
  • 3〜4週間目:シロップの完成! 梅は取り出し、シロップを冷蔵庫で保管。

💡 飲み方と保存方法

  • 水や炭酸水、牛乳などで4~5倍に薄めて飲みます。
  • 完成後は、冷蔵庫で半年ほど保存可能
  • 残った梅の実は、ジャムや煮物、ヨーグルトのトッピングにも。

✅ より失敗しにくくするポイント

  • 梅と砂糖の重量は1:1が基本(甘さ控えめなら梅:砂糖=1:0.8でも可)
  • 梅に傷があるとカビや発酵の原因になるため、傷のない梅を使用
  • 氷砂糖はゆっくり溶けて発酵しにくく、初心者向け

2. 梅酒:夫婦の団らんや大人の楽しみに

青梅と氷砂糖、ホワイトリカーで漬け込む梅酒は、
時が経つほど深みを増す、大人の保存食。

「熟成を待つ時間」が、
どこか人生と重なるようにも感じます。

少し疲れた日の晩酌に、
梅の香りと共に心を癒してくれる存在です。

🍷 基本の梅酒の作り方(ホワイトリカー使用)

■ 材料(4リットル瓶1本分)

材料分量
青梅(できれば南高梅)1kg
氷砂糖(またはグラニュー糖)500g~1kg(お好みで調整)
ホワイトリカー(35度)1.8リットル(1本)

🧂 下準備(梅と瓶の処理)

  1. 瓶の消毒
     熱湯を回しかけて殺菌するか、アルコール(35度以上)で内側をしっかり拭き取って自然乾燥させます。
  2. 梅の下処理
     - 傷のない青梅を水でやさしく洗い、水気を完全にふき取る。
     - 爪楊枝などでヘタ(なり口)を丁寧に取り除く。
     - 梅に水分が残っているとカビや発酵の原因になるため、しっかり乾燥させるのがポイント。

🫙 漬け込み手順

  1. 梅と氷砂糖を交互に入れる
     瓶の中に、青梅 → 氷砂糖 → 青梅……と層になるように入れる。
  2. ホワイトリカーを注ぐ
     瓶の口元近くまで静かにホワイトリカーを注ぎ入れる。
     ※材料がしっかりお酒に浸かるようにする。
  3. 密閉して冷暗所に置く
     直射日光を避けた涼しい場所(台所の戸棚など)に保管します。

🕒 熟成の目安

期間状態と味わい
3ヶ月〜6ヶ月ほんのり梅の香り。さっぱり飲みやすい。
1年〜3年深みのある味に変化。香り豊かでまろやかに。
5年〜10年コクと芳醇さが増し、特別な一本に。

※梅の実は、半年~1年程度で取り出すと濁りにくくなります(お好みで可)。


✅ ポイント・アレンジ

  • 砂糖控えめにしたい方:300gでもOK(ただし漬け上がりは酸味が強め)
  • 焼酎以外で作る場合
     - ブランデー → 芳醇で香り高く
     - ウイスキー → 大人の味わいに
     - 日本酒 → 甘さひかえめ(長期保存は不向き)

🍸 飲み方アレンジ

  • ロック
  • 炭酸割り(梅酒ソーダ)
  • お湯割り(冬場におすすめ)
  • バニラアイスにかける(大人のデザート)

🚫 注意点

  • アルコール度数が20度未満の酒では漬けることが法律上禁止されています。
     → 必ず35度前後のホワイトリカーや焼酎を使用してください。

🍶 保存のコツ

  • 初心者は透明瓶より茶色い保存瓶(遮光タイプ)を選ぶと失敗しにくいです。
  • 開栓前は常温保存、開栓後は冷蔵庫で保存すると風味が長持ちします。

3. 梅干し:厄除けと健康の象徴

黄色く熟した南高梅を使う梅干しは、
手間も時間もかかる分、家族の“無病息災”を願う象徴的な保存食。

赤しそを揉み、三日三晩の土用干しを終えてようやく完成。
ごはんのお供だけでなく、旅のお守りや薬代わりにもなる万能食です。

🍱 赤しそ入り梅干しの作り方(初心者向け)

■ 材料(梅1kg分)

材料分量
完熟梅(南高梅など)1kg
粗塩(自然塩)180g(梅の重量の18%)
赤しそ(生葉)200g前後(葉のみ)
粗塩(赤しそ用)30〜40g(赤しその重量の15〜20%)
焼酎(35度)少々(梅の殺菌用)

🧂 Step1:梅の下処理と塩漬け(白梅酢を出す)

  1. 梅を洗ってヘタを取る。しっかり水気を拭き取る。
  2. 殺菌用に焼酎をふりかける(スプレーでもOK)。
  3. ジップロックまたは保存容器に、梅と塩を交互に重ねて漬ける。
  4. 重しをのせ、冷暗所で10日〜2週間保存
     → 白梅酢(梅から出る塩水)がしっかり上がったら次の工程へ。

🌿 Step2:赤しその塩もみ(アク抜き)

  1. 赤しその葉だけを摘み取り、流水でしっかり洗って水気をふく。
  2. ボウルに赤しそと塩の半量を入れて、強く揉む
     → 紫の汁(アク)が出たらしっかり絞る。
  3. 残りの塩を加えてもう一度よく揉み、同じくアクを絞る。
     → 赤黒い汁が出なくなったら完了。しそがしっとりする。

🍶 Step3:赤しそを梅に加える

  1. 白梅酢がしっかり上がった保存容器を開ける。
  2. 赤しそをまんべんなく広げて加える。
     → 軽く押さえると赤しそが梅酢になじみ、鮮やかな赤色に変化。
  3. ふたを閉めて、さらに2週間ほど漬け込む

☀️ Step4:土用干し(梅雨明け後に晴れた3日間)

  1. 晴天が3日以上続く時期(7月下旬〜8月上旬)を選ぶ。
  2. ザルに梅と赤しそを並べ、風通しの良い場所で天日干し。
     → 日中干して、夜は取り込む or 梅酢に戻す(どちらでもOK)
  3. 3日目が終わったら、清潔な保存容器に入れて保存。
     → 熟成させるほど味がまろやかに。

✅ 保存と活用

  • 保存期間:1年〜数年(冷暗所で保存)
  • 完成した赤しそは「ゆかり」などふりかけに再利用可能
  • 白梅酢は、殺菌・酢の物・ドレッシングなどに活用できる万能調味料

💡 よくある質問

Q. 赤しその色が悪い・黒っぽいです
→ 白梅酢に入れてから発色します。アク抜きが不十分だと黒くなりがち。

Q. 赤しそを入れた後、カビが出るのが心配です
→ 焼酎で梅や容器を消毒し、空気を抜いて密閉。塩分18%以上なら安全域。

保存食=未来を整える“希望のかたち”

梅仕事をする5月は、どこか心が落ち着く不思議な時期。
自然のめぐりに合わせて手を動かすことが、
私たちの暮らしと心を整えてくれるのかもしれません。

仕込んだ梅が熟す頃、夏が本格的にやってきます。
未来の自分や家族の健康を想いながら、
今、静かに手を動かす──それが、5月の梅仕事です。


【豆知識】梅仕事の基本スケジュール

期間作業内容
5月中旬青梅の出荷開始(梅シロップ・梅酒用)
6月上旬完熟梅の収穫(梅干し用)
6月中旬赤しその収穫・塩揉み(梅干し用)
7月下旬土用干し(梅干しの仕上げ)

【さいごに】今年こそ、梅しごとを暮らしに

スーパーに青梅が並び始めたら、それが合図。
手間を惜しまず、自分の手で「季節の記憶」を刻む時間。
今年は、そんな梅仕事を暮らしに取り入れてみませんか?

目まぐるしい日々のなかに、
少しだけ“ていねいな時間”を持つことで、
未来の自分へ優しさを届けることができるのです。

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